崇城大学工学部 建築学科4年
岩下 佳澄さん
私は東日本大震災も少し経験したのですが、家に帰れないほどの経験は熊本地震が初めてでした。コロナ禍の今は感染しないようにすることで頭がいっぱいなので、地震のことを記憶から消さないようにすることが今の課題だと思います。震災から5年たった今年をターニングポイントに、記憶の継承やこれからの日常を皆さんと考えていきたいと思います。
熊本大学大学院自然科学教育部 社会環境マネジメント4年
王 光耀さん
中国遼寧省瀋陽市出身で日本に来て1年半になりました。田中先生の研究室で勉強しています。研究室では、まち歩きやワークショップなどを通じて熊本地震がもたらしたハード面とソフト面の被害を検証して、記憶を継承していくことの大切さを感じました。今回は皆さんとコミュニケーションして、記憶の継承についてさらに検討したいです。
熊本県立大学総合管理学部 総合管理学科4年
大塚 里実さん
熊本地震のときは高校2年生でした。自宅が半壊する被害を受けてしまったので、今回は被災の経験をしっかり伝えていきたいと思います。また大学でマーケティングを専攻しているので、学んだことをプロジェクトに生かせたらうれしいです。
熊本大学工学部 土木建築学科4年
小川 連太郎さん
田中先生の研究室で勉強しています。熊本に来て1年目です。以前いた広島では、豪雨災害や台風で実家が被災する経験をしていて、災害からの復興に関心を持っています。熊本地震は経験していないのですが、学ばせてもらっている熊本にどう貢献できるか、今回の活動を通じて学んでいきたいと思っています。
熊本県立大学総合管理学部 総合管理学科3年
坂元 彩華さん
大学では教育や情報分野の勉強をしています。今回の参加者の皆さんは建築や環境など、私が学んでいることとは異なるさまざまな分野の勉強をしている人たちがいるので、すごい大きな化学反応が起こるのだろうなと、今からワクワクしています。
熊本大学大学院自然科学教育部 土木建築学専攻2年
髙良 幸作さん
崇城大学で建築学を学び、現在は田中先生の研究室にいます。沖縄の出身で、熊本に来たばかりの大学1年生の4月に熊本地震に遭って沖縄に避難したのですが、地震のときに助けてもらった人たちへ恩返しをできればと思っています。自分でも震災の記憶が薄れている実感もあるので、今回のプログラムの意義を感じました。
熊本大学大学院自然科学教育部 土木建築学専攻1年
竹原 大旗さん
福岡県糸島市出身です。田中先生の研究室で勉強しています。被災経験はないのですが、熊本に来て人と話すうちに災害について考えるようになり、地震で被災した南阿蘇鉄道の復旧を支援する団体に入りました。記憶の風化を止める方法について、今回は「自分事」として考えたいと思っています。今はワクワクがとまりません。最高の2週間にしたいと思います。
熊本県立大学環境共生学部 居住環境学科4年
西尾 ひよりさん
岐阜県出身です。熊本地震が起きた当時はテレビのニュースを見て、遠くで起きた災害という程度の意識でしたが、熊本に来て大変なことが起きていたことを実感しました。今回は熊本でのこれまでの中で感じた震災のいろいろなことを振り返り、将来の熊本を考える機会にできたらと思っています。
熊本県立大学総合管理学部 総合管理学科1年
村田 和泉さん
中学2年生のときに熊本地震を経験しました。高校生になって総合的な学習の時間で防災を考えたとき、ハザードマップの災害危険区域には昔の人が災害を後世に伝えるために残してくれたものがあったのに、それらが変えられてしまっていることに疑問を感じました。今回は熊本地震の記憶を後世に残せる提案をできたらと思っています。
熊本県立大学大学院環境共生学研究科1年
山田 芽さん
熊本地震が起きたときは社会人としてECサイト運営会社に勤務していました。震災の直後に、お客さまから熊本の産品を買って応援したいという声が挙がり、多くの商品が集まったという経験があります。今回はそのように応援していただいた方たちのためにも、熊本に何かを残せたらという気持ちがあります。
熊本大学 熊本創生推進機構 准教授
田中 尚人氏
「オリエンテーション」
今回のプログラムのミッション(任務)は、①熊本地震からの5年を振り返り、災害や復興の記録をアーカイブ(長期保存)する②多様な主体と協働し、誰もが「記憶の継承」に取り組める熊本らしい社会を共創する③熊本地震やその復興の過程で得た記憶や経験、教訓を持続可能なかたちで未来に引き継ぐ─の3つです。成果発表をしてもらいますが、心に留めてほしいのは「みんな違って、みんないい」ということ。復興とは何かを考え、地域の人から話を聞いて日常を学んでください。今回の経験が皆さんの思い込みを変える2週間になればと願っています。
京都大学 防災研究所 教授
矢守 克也氏
「災害を語り継ぐこと」
1995年の阪神・淡路大震災以来、災害の記憶を引き継ぐ活動を続けてきました。私の工夫を3つだけ話します。1つ目は、被災前は当たり前だった大切なヒト・モノ・コトへの被災者の気付きを他の地域の人たちに伝え、防災の重要性を認識してもらうことです。2つ目は、被災者の心の復興のため、地域住民が共有する被災前の記憶を引き継ぐことです。3つ目は、災害時のジレンマに焦点を当て、正解ではなく「成解(せいかい)」を導く防災教育教材「クロスロード(分かれ道)神戸編」を発表しました。学生の皆さんの未来を見据えた取り組みに期待しています。
SARCK(さるくっく) 代表
松岡 優子氏
「かたる、とは」
私は俳優や演出家をしていて、熊本地震復興ボランティア集団を立ち上げました。語るには、よく聞き、よく見、よく感じる力が必要で、伝わるように工夫することが大切です。例えば戦争の悲惨さは、死者や被害者の数だけではうまく伝わりません。井上ひさし原作の「父と暮らせば」という舞台作品は、戦争や原爆の悲惨さをコミカルに描いていて、父と娘の深い愛情が伝わってきます。井上さんは、多くの人からの共感を得、感動を届けるには「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをゆかいに、ゆかいなことをまじめに書くこと」を大切にされました。
お茶乃のぐち専務
野口 大樹氏
「生業を引き継ぐ」
緑茶の生産・製造・販売しています。私は熊本地震を経験して地域とともに生きる覚悟が決まり、災害に備えたリスクマネジメントを大事にするようになりました。ただ現実には、農家の担い手が少ない地域では人に頼るしかない状況もあります。そこで地域の100年先を見据え、農業の可能性を試すために一般社団法人アグリウォーリアーズ熊本を立ち上げました。農業は裾野が幅広い、社会の土台となる産業です。コロナ禍によって今は本質で勝負する時代になったと思っています。われわれに何ができるか、行動で示していきたいと考えています。
熊本大学 熊本創生推進機構 准教授
田中 尚人氏
発表を聞いて、皆さんが考えたものには一つとして無駄がないという印象を持ちました。全部生かしてください。ただ時間に限りがあるので、発表できるものと、できないものがありますね。それに、それぞれが学んでいる専門分野の知識が邪魔をして、大事なことが見えなくなっているかもしれません。今回はみんなで勉強しているので、他班の良いところはどんどん取り入れて、学び合うことが大事です。皆さんはこれから各町に行って話を聞くと思いますが、そう簡単に相手と共感はできないかもしれません。それでも皆さんが学びたいという気持ちを整理して相手に伝えてください。聞いたことを全てオープンにする必要はありません。自分の心にとどめておくものがあってもいいです。それが皆さんの学びとなればいいのです。学ばせてもらうという気持ちでプログラムに取り組んでもらいたいと思います。
SARCK(さるくっく) 代表
松岡 優子氏
「かたる、とは」
地域の未来は明るいな、と思いました。皆さんが前より必ず良くなるという捉え方をしていて、それってすごくいい考え方だと思いました。
京都大学 防災研究所 教授
矢守 克也氏
当事者の「成解」大事に
ステップアップに期待
3班の発表の中には、記憶の継承に効果的なツールが出てきました。A班はポスター、B班は「笑本」を使ったストーリー、C班はアーカイブ(長期保存)。記憶の継承には「正解」を伝えるのではなく、当事者が悩みに直面しひねり出した「成解(せいかい)」を語り合い、何度も語り直すことが大事です。プログラムが終了したからこれで終わりではなく、皆さんが今後、さらにステップアップしていかれることを期待しています。
SARCK(さるくっく) 代表
松岡 優子氏
創造力と想像力を確信
「何かが始まった」実感
ゼロをイチにすることが一番大変なことですが、皆さんの創造力、そして想像する力を見せていただきました。発表をしている皆さんの先に人が見えるようで、きちんとまちで人に向き合ってきたんだなと思えました。すてきな発表でした。今回のプロジェクトを通して、皆さんの中で何かが始まったのではないでしょうか。今後に期待しています。
熊本大学 熊本創生推進機構 准教授
田中 尚人氏
語り継ぐ意味を知り
貴重な成長の機会に
初日の講演で大切なことを学びました。矢守先生からは、語り継ぐことは災害や記憶の継承だけでなく、発災前の日常も含めること。松岡さんからは、人の心に届くのは美辞麗句ではなく人の心情だということ。野口さんからは、地域で生きる覚悟から本当の継承とは何かということ。3班の提案はそれぞれみんなでつくった素晴らしいものでした。A班は手を動かし、すてきなポスターを試作してくれました。B班は水に着目し、解決策を構造的に考えてくれました。C班は最後に本プログラム名の“未来予想図”を描いてくれました。今回のプログラムではさまざまな学びを得られ、全員の貴重な成長の機会になったと思います。関係者の皆さんに感謝します。
主催
熊本日日新聞社
サントリーホールディングス
後援
熊本県
御船町
嘉島町
益城町
南阿蘇村
熊本大学 熊本創生推進機構